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| 戸祭 早紀 |
(一社)浄化槽システム協会講師団 |
(月刊浄化槽 2026年9月号) |
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1.はじめに
浄化槽業界は、公衆衛生と水環境保全を支える重要な社会インフラであり、今後も安定的で持続可能な運営維持が求められています。一方で、国内における、近年の少子高齢化により、人材不足や技術継承といった大きな課題があります。これは、当業界においても喫緊の課題でもあります。そのような状況の中で、仕事と育児の両立は、浄化槽業界だけでなく日本社会全体にとって重要なテーマとなっています。
日本政府ではこうした課題解決に向け、仕事と育児の両立支援に力を入れており、自身の働く会社でもそのような制度が導入されています。
私自身、会社の短時間勤務制度やテレワーク勤務制度を利用して、日々仕事と育児の両立に奮闘しています。そこで、本稿では自身が利用している育児両立支援制度を紹介するとともに、育児を通して経験した働き方の変化やそこから得た気づきについて紹介します。 |
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2.社会の価値観の変化
昭和の頃、家のことは「妻」に任せ、「夫」は外で長時間労働や会社を優先した働き方が一般的とされる時代がありました。しかしながら、少子高齢化の進行に伴い労働力人口が減少するなど、社会を取り巻く環境は大きく変化しています。内閣府の男女共同参画白書によると、令和7(2025)年時点で、「共働き世帯数」は「専業主婦世帯数」の約3.5倍となり(図-1参照)、近年では夫婦が共に働く世帯が増えていると報告されています 1)。
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| 図-1. 共働き世帯数と専業主婦世帯数の推移(妻が64歳以下の世帯) |
| 【出典】 |
内閣府「令和8年版男女共同参画白書 特集編 仕事や職業キャリアに関する女性の学び直し・暮らしを充実させる男性の学び直し〜学び直しの現状と分析〜」p.11特-5図 |
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将来のライフプランについて18歳〜34歳の未婚者を対象にした調査結果より、未婚女性の理想も、未婚男性の将来のパートナーに対する期待も、家庭と仕事の両立を望む人の割合が上昇し(図-2参照)、男女問わず、若い世代の理想とする生き方・働き方が「ワークライフバランス重視」の価値観に変わってきていることが報告されています 2)。
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| 図-2. 未婚者を対象にしたライフコースの希望 |
| 【出典】 |
内閣府「令和5年版男女共同参画白書 特集編 新たな生活様式・働き方を全ての人の活躍につなげるために〜職業観・家庭観が大きく変化する中、「令和モデル」の実現に向けて〜」 |
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総務省の就業構造基本調査結果では、小学校入学前の未就学児を育児している者の就業状況について、未就学児の育児をしている無業者は平成24(2012)年〜令和4(2022)年の10年間で146万人減少しており、一方、未就学児の育児をしている有業者は111万人増加しており、未就学児の育児をしている者に占める有業者の割合は71.1%→85.2%に上昇し(図-3参照) 3)、働きながら子育てをする家庭が増えていることがグラフから読み解けます。
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図-3. 就業状態別育児をしている者の数および育児をしている者に占める
有業者の割合の推移(2012〜2022年)-全国 |
| 【出典】 |
総務省「令和4年就業構造基本調査 結果の概要」p.23図7-1 |
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以上の調査結果より、現代の少子高齢化社会の中で、夫婦が共に働く世帯が増えていること、また、子育てをする家庭の中でも夫婦が共に働いている家庭が増えていることから、家庭の在り方が変化していることがわかります。 |
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3.育児両立支援制度
日本では、令和8(2026)年現在、育児両立支援について以下の制度や規則があります。
- 育児休業
- 産後パパ産休
- パパ・ママ育休プラス
- 子の看護等休暇
- 短時間勤務等の措置
- 所定労働時間外、時間外労働の制限
- 深夜業の制限
- 柔軟な働き方を実現するための措置
- ハラスメント等の防止
厚生労働省は、育児休業(産後パパ育休も含む)取得率について、令和6年度の女性は86.6%で過去16年間ほぼ横ばいに対し、男性は40.5%であり、育児両立支援策が段階的に施行され始めた令和4(2022)年度以降は急上昇している(図-4参照)ことを報告しています 4)。このことから、令和の時代では、女性だけでなく男性も積極的に子育てに関わっていることがわかります。ちなみに、自身が働く会社での育児休業取得率は、2025年度実績で男女ともに100%であり 5)、男性女性問わず深く子育てに関わっています。
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| 図-4. 育児休業取得率の推移 |
| 【出典】 |
厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査(事業所調査 結果概要)」p.5図4 |
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小学4年生未満の子を育児している人を対象とした勤務形態別の育児両立支援制度の利用状況(図-5参照) 6)についてみると、「制度を利用したことがない」と回答した人の割合が高く、また、「勤務先に制度がない」と回答した人の割合が1〜2割程度で、制度を利用したことがない人が多いことがグラフから読み取れます。また、「制度を利用したことがある」の回答に注目してみると、女性(正社員・職員)は、短時間勤務制度を利用したことがあると回答した人の割合が高く、勤務時間を制限して働いてる人が多いことがわかります。
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| 図-5. その他の両立支援制度の利用状況(抜粋) |
| 【出典】 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング「仕事と家庭の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」(令和7年度厚生労働省委託事業)p.63-66図表89〜94、96 |
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一方で、男性(正社員・職員)は、時差出勤制度・フレックスタイム制度やテレワーク勤務制度を利用したことがあると回答した人の割合が比較的高く、勤務時間を制限するのではなく、フルタイムでの勤務を希望する傾向が見られました。このことから、勤務形態における育児両立支援制度の普及にまだまだ課題はありますが、育児両立支援制度が今後さらに充実し、その人に合った働き方の選択肢が増えることで、仕事と育児の両立がより実現しやすくなることが推測されます。
ただし、この育児両立支援制度が、仮に会社で利用できるとしても、「職場で制度を利用しやすい環境」、「業務量軽減の配慮」、「業務をカバーし合う風土」等のような職場からの協力や配慮がなければ、仕事と育児の両立は非常に困難となり、離職も考えざるを得なくなります。図−6 6)は、勤務先で育児をしながら仕事を続けられない理由についての調査結果を示します。図-6より、職場環境が理由の割合が高いことがわかります。したがって、仕事と育児を両立するには、制度の整備・充実に加え、周囲のサポートと理解が必要不可欠です。
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| 図-6. 現在の勤務先で育児しながら仕事を続けられないと思う理由 |
| 【出典】 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング「仕事と家庭の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」(令和7年度厚生労働省委託事業)p.21図表29 |
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自身の働く会社では、「お子さまの成長を、一番近くで見守れるように。」をモットーに、最長2年間取得可能な育児休業制度、小学校3年生までの子供を持つ社員を対象とした短時間勤務制度などを整備し、社員が家族と歩む時間を大切にしながら働ける環境づくりを進めています。また、制度を整備するだけでなく、誰もが気兼ねなく制度を活用できるポジティブな職場風土の醸成にも努めています。そうした職場環境があるからこそ、私自身も安心して育児と両立して働けていると実感しています。
こうした育児両立支援制度に加え、令和8(2026)年4月から「子ども・子育て支援金制度」が新たに施行されました。本稿では支援金制度の詳細について触れませんが、育児を取り巻く制度は、今後も変化していくことが予想されるため、その都度、最新の情報を確認することが大切です。 |
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4.自身の働き方と浄化槽業界ならではの課題
ここまでは、浄化槽業界を含めた日本社会全体における仕事と育児の両立について述べてきました。ここでは、自身の働き方の変化や子育てを通じて経験した浄化槽業界ならではの課題について紹介します。
前述の通り、私自身も会社の「短時間勤務制度」や「テレワーク勤務制度」を組み合わせながら働いています。図-7は自身の1日を表したものです。
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| 図-7. 自身の1日 |
もともと通勤に2時間弱かかっていたところに、保育園の送迎が加わることで、移動時間に2時間を超えるようになりました。さらに、保育園の開園時間・閉園時間を考慮すると、勤務する可能な時間が限られてしまうため、短時間勤務制度を利用することにしました。育児する前は、「残業時間に溜まっている仕事を片付ける」という働き方でしたが、短時間勤務制度を利用するようになってからは、「限られた時間でどう効率よく仕事をするか」を意識した働き方へと変わりました。子どもの急な体調不良による保育園からの呼び出しや、看病のため数日休まざるを得ないこともあり、仕事ができる時間はさらに限られます。そのため、業務の優先順位を明確にし、その日に対応すべき事項を整理して取り組み、限られた時間をできる限り有効活用するよう心掛けています。また、自身の業務はチームで進めていくことが多く、自身が急に休むことになっても他の人が対応し、業務が滞らないよう、日ごろから作業手順書や計画表などを作成するとともに、チーム内で密に進捗を共有するようになりました。その結果、以前よりもチーム全体の業務状況を把握する意識が強くなり、円滑な業務遂行に繋がっていると感じています。
テレワーク勤務制度を利用することで、自身の場合、前述の通り、2時間以上かかる移動時間を削減することができ、その時間を家事や育児に充てることができるようになります。それにより、家事育児にゆとりが生まれる他、休息時間も確保できるようになり、心身の負担軽減につながっています。また、テレワーク勤務をすることで、データ入力や報告書などの書類作成を集中して行えるので、仕事の効率が上がります。
他方では、浄化槽や排水処理の仕事は、全てをオンラインで完結できるものではないことも実感しています。浄化槽や排水処理の現場では、実際に現場に行って見なければ分からないことが少なくありません。処理水の状態や設備の運転状況だけではなく、水の色や臭気・音、曝気槽の様子、微生物の状態、ポンプの稼働状況など、数値データだけでは把握しきれない情報が数多く存在します。自身も育児する前は、自ら現場に行って目や耳、鼻などの五感を使って設備や槽内の状況を確認し、数値データを含めた総合的に判断することが当たり前でした。特に、経験の浅いメンバーと一緒に現場に行き、調査を行いながら、例えば、臭いや音について「普段はこうだけど、今はこう違うから点検が必要」といった感覚的な部分も含めて指導することもできました。しかしながら、育児するようになってからは短時間勤務であり、かつ、子どもの送迎もあることから、出張や遠出の外出業務が難しくなり、チームメンバーに現場調査を依頼し、その報告や写真、測定データを基に状況を判断せざるを得ない機会が多くなりました。状況によっては、まだ現場に不慣れなメンバーや、通常は別の業務を行っているメンバーに、現場調査を依頼せざるを得ない場面もあり、そのような場面で、自身の指示が不十分であったために、報告と写真、データだけではどういう状況なのか判断つかず、後から追加で現場調査をお願いすることもありました。報告や写真、数値データだけでは、現場全体の様子や臭気、設備の些細な変化までは把握できないので、浄化槽や排水処理は、現場でしかわからないことが多いこと、また、実際に現場に行って経験を積む大切さを改めて感じました。
同時に、この経験をしたことで、私自身にとって「相手に伝わる指示とは何か」を見直す機会にもなりました。現場で何を見て、何を確認し、どのように報告してもらうのかを具体的に伝えることの重要性を改めて認識しました。加えて、メンバーにとっても、どのような視点で現場を観察すべきかを考える機会となり、技術の継承という意味でも新たな学びに繋がったのではないかと感じています。浄化槽や排水処理の技術は、マニュアルだけで習得できるものではなく、現場での経験の積み重ねによって身に付く側面が大きいと感じています。だからこそ、現場での対面指導が重要であることは今後も変わらないと思います。その一方で、仕事と育児を両立する中で得た経験は、限られた時間の中でもチームで情報を共有し、より良いコミュニケーションを図ることの大切さを教えてくれました。
働き方の変化や現場指導の難しさの他に、育児を始めてから、それまで意識していなかった日常の小さなことにも気を配るようにもなりました。その一つが、仕事で付着する臭いや汚れへの配慮です。浄化槽や排水処理の業務では、現場調査や設備点検などを行う機会が多く、作業後に臭いや汚れが衣服へ付着することも珍しくありません。これまでは特に気に留めることもありませんでしたが、子どもが生まれてからは、自身に付着した臭いや汚れが気になったり、自宅へ持ち込まないよう意識したりするようになりました。例えば、帰宅後はすぐに着替えを行い、作業着や現場で使用した衣類は家族の、特に、子どもの洗濯物とは分けて洗濯するようにしています。また、子どもを抱き上げる前には必ず手洗いや身だしなみを整えるようにもなりました。こうしたことは決して特別なことではありませんが、育児を経験したからこそ意識するようになった変化の一つです。浄化槽や排水処理の仕事は、人々の生活環境や公衆衛生を支える仕事であります。その仕事に携わる者として、自宅でも自身や子どもの衛生管理を意識するようになり、仕事と家庭は決して切り離されたものではなく、お互いに影響し合っていることを実感しました。 |
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5.おわりに
未来の世代が安心して子どもを育て、働き続けられる社会を目指すためには、育児両立支援制度のさらなる発展が不可欠です。また仕事と育児の両立を進める上では、一人一人のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を実現できる環境づくりを継続・推進していくことも重要であると感じています。浄化槽業界も同様で、業界の特性を踏まえ、それぞれの業務に応じた最適な働き方を模索していく必要があります。
仕事と育児の両立は、決して一人だけで成り立つものではありません。家族の協力はもちろん、職場の仲間の理解やサポートがあってこそ、日々の仕事を続けることができます。私自身、短時間勤務制度やテレワーク勤務制度を利用する中で、急な予定変更や現場対応をメンバーにお願いすることもあり、そのたびに周囲のサポートのありがたさを実感しています。
この記事を読んでくださった皆様の職場にも、仕事と育児の両立に励んでいる方がいるかもしれません。保育園のお迎えのために定時で退社する人、急な子どもの発熱で予定を変更せざるを得ない人、一見すると何気ない日常の中にも、それぞれが精一杯努力している事情があります。もしそんな場面に出会ったとき、「そういえば、あの記事にこんなことが書いてあったな」と思い出していただき、声を掛けたり、気に掛けたりしていただけたら、とても嬉しく思います。その小さな気配りや支え合いが、安心して働ける職場づくりにつながり、ひいては業界全体の未来を支える力になるのではないでしょうか。
浄化槽は未来の社会を支えるインフラです。令和6年能登半島地震や令和8年熊本地震などの大地震や台風や線状降水帯による豪雨など、近年、大規模な自然災害が頻発しています。こうした状況を受け、災害に強い国土づくりや、生活インフラの強靱化・分散化の重要性がこれまで以上に高まっています。浄化槽もまた、各家庭や地域ごとに生活排水を処理できる分散型インフラであり、下水道が被災した場合でも地域単位で機能を維持できることから、災害に強い生活排水処理システムとして期待されています。子どもを育てることも、生活を支えるインフラを守ることも、どちらも未来の投資であり、未来の世代へより良い社会を引き継ぐためには、持続可能なインフラだけでなく、お互いを思いやり・支え合える職場や人とのつながりも、同じように大切な社会基盤であると感じています。私自身も、これからも仕事と育児をしながら、その社会基盤を支える一人として、次世代が安心して暮らせる社会を築いていきたいと思います。 |
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【引用文献】
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内閣府「令和8年版男女共同参画白書 特集編 「仕事と健康の両立 〜全ての人が希望に応じて活躍できる社会の実現に向けて〜」 |
| 2) |
内閣府「令和5年度版男女共同参画白書 特集編 「新たな生活様式・働き方を全ての人の活躍につなげるために 〜職業観・家庭観が大きく変化する中、「令和モデル」の実現に向けて〜」 |
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総務省「令和4年就業構造基本調査」 |
| 4) |
厚生労働省「令和7年度雇用均等基本調査(事業所調査)」 |
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ニッコー株式会社ホームページ: https://recruit-nikko-company.jp/company/data/ |
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三菱UFJリサーチ&コンサルティング「仕事と家庭の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」(令和7年度厚生労働省委託事業) |
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| (ニッコー(株) 水創り事業部) |
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